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奇界遺産

May 23, 2010奇界遺産, 書評

前から気になっていた写真集「奇界遺産」を読み終えたので感想をのこしておく。

著者はかの有名な X51.ORG の管理者でもあるフォト ジャーナリスト佐藤健寿氏。2 年ほど前にサイトの更新を止め取材旅行に出かけていることは知っていたのだが、本書の内容を見るにとても充実した旅だったのだろう。どの写真も実に生々しく魅力的。

本書の 1/3 ぐらいは万人向けだが残りはかなり人を選ぶだろう。奇妙で非合理で狂気に近い迫力に満ちた造形物の数々は、元気のないときに見ると高熱にうなされそうな強烈さである。

例えば表紙にもなっているベトナムのスイ・ティエン公園 (Công ty Cổ phần Du Lịch Văn Hóa Suối Tiên)や、タイのワットパーラックローイ (วัดป่าหลักร้อย と書くらしい。公式サイトは発見できず) などは凄まじい。園内やオブジェの造形と色彩センスが素晴らしいのは当然として何よりそれらの巨大さに圧倒される。

通行人と比較するとその異様がよくわかる。信仰や重要度で大きさを決めているのだろうか?実際に訪れたら怪獣の闊歩する世界に放り出されたような、そんな錯覚を味わえそうだ。想像力の袋小路に迷い込んだときは、こういう場所を目指すとよいのかもしれない。

ところで本書では国外のみを取り上げているが日本ならば養老天命反転地なんかはどうだろう?その昔、訪れたことがあるのだが、噂に違わぬ面白さだった。

マンガならば逆柱いみりの世界が本書に近い気がする。馬馬虎虎 (残念ながら絶版) に収録されている「道楽者の海」で疾走する街の混沌とした描写は、まさに読むドラッグである。

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