アカベコマイリ

HEAR NOTHING SEE NOTHING SAY NOTHING

JavaScript Standard Style を試す

話題の JavaScript Standard Style を試してみた。

背景

以前、以下の記事とはてブで JavaScript Standard Style を知った。

はてブではセミコロンの省略に抵抗感のある人が多く私もそうだった。しかし同はてブで id:mysticatea さんが指摘されているように ESLint の no-unexpected-multiline でセミコロン省略時に問題のおきるコードを検出できる。また以下の理由からセミ コロンなしも案外よいものじゃないかと考えるようになった。

  • 昨年末に Swift 入門してセミコロンのないコードに慣れた
  • Electron の JavaScript コードがセミコロンなしルールで読みやすかった

私のコーディング スタイルは世間の標準からみると独特で、これは過去に在籍していたプロジェクトのルールを踏襲している。主な特徴としては

  • 括弧の内側にスペースを入れる
  • ifwhile などのキーワードと関数名の後にはスペースを入れない

というもの。C 言語や JavaScript でよく見られる K&R 系だとこんな感じのコードも

function isArray (arg) {
  if (Array.isArray) {
    return Array.isArray(arg);
  }

  return Object.prototype.toString.call(arg) === '[object Array]';
}

私のスタイルだとこうなる。

function isArray( arg ) {
  if( Array.isArray ) {
    return Array.isArray( arg );
  }

  return Object.prototype.toString.call( arg ) === '[object Array]';
}

これはこれで気に入っていたのだが GitHub で OSS を運用にするようになり、第三者からの PR は一般的な方のスタイルでくるため扱いに困っていた。スタイルの違いを理由に断るとか直すのも面倒なので今はそのまま merge しているけれど、そもそも自分の好みより世に迎合するほうがよいんじゃないか?と思い始めた。

あと Xcode の Editor におけるコーディング スタイル設定が貧弱というのもある。他の IDE だと私のスタイルを再現するのに十分な設定があるためそうしてきた。しかし Xcode の Text Editing は驚くほど設定がない。まともにいじれるのは Indentation ぐらいである。

これまでは仕方なく根性で手動整形してきたが Swift 入門を機にあきらめた。iOS で SQLite – FMDB の使い方 2017のサンプルでは Xcode の提示するスニペットそのままに書いている。

この経験を経て独自スタイルへ固執することをやめることにした。プラットフォーム標準があればそれに従う。IDE や Editor、Linter の補助を最大限に享受する方針へ転換するのだ。

というわけで、まずは公私ともに書く機会の多い JavaScript のコーディング スタイルから変更してみる。

JavaScript Standard Style

JavaScript のコーディング スタイルとしては

あたりが有名。どれを選ぶか迷ったが Electron のようなセミコロンなしスタイルを採用している JavaScript Standard Style にしてみた。Standard と銘打つ度胸と GitHub の star 数も判断材料である。セミコロン以外はよく見るスタイルなので、ここを受け入れられるかが重要。

JavaScript Standard Style への準拠にあたり、それを保証する仕組みがほしいので ESLint を利用。今回は akabekobeko/npm-wpxml2md プロジェクトで試す。feross/eslint-config-standard を参考にプロジェクトのローカルに必要な npm をインストール。

$ npm i -D eslint-config-standard eslint-plugin-standard eslint-plugin-promise

次にプロジェクトのルートで .eslintrc を定義。

{
  "extends": "standard",
  "env": {
    "mocha": true
  },
  "rules": {
    "no-multi-spaces": 0,
    "yoda": 0
  }
}

JavaScript Standard Style を使用するだけなら "extends": "standard" だけでよい。しかし mocha で書いたユニット テストも対象にしたいのと、

  • 連続した複数行の変数宣言などで縦位置をスペースで揃えたい
  • if 文で不等号による範囲チェックを if (0 <= value && value < max) のように書きたい

のでそれらの設定を追加した。JavaScript Standard Style はスタイルに準拠していることを示す証として

Standard - JavaScript Style Guide

というバッヂを提供している。ルール緩和した場合でも掲げてよいものか迷ったけれど、緩和は極小なので README へ含めることにした。第三者が README をながめたときにプロジェクトのコーディング スタイルを確認できるのはよいことだ。

私は JavaScript のコーディングに Atom を使用しており、ESLint によるリアル タイムなチェックのため

を採用している。これまで linter-eslint はグローバルにインストールした ESLint とプラグインを使用して設定も ~/.eslintrc を参照するようにしていたが、このプラグインはプロジェクトのローカルに ESLint と .eslintrc を検出するとそちらを優先してくれる。

そのため既存プロジェクトは現行のスタイルを維持しつつ、個別に JavaScript Standard Style を採用する運用が可能である。いきなりグローバルを書き換えてもよいけど、少しずつ移行するほうが安全だろう。

スタイルのチェックは基本的に Atom 上で確認 & 修正するのだがファイル単位で個別に作業していると抜けも出やすいため、一括チェック可能な仕組みも用意する。私は npm-scripts に

{
  "scripts": {
    "eslint": "eslint ./src"
  }
}

を定義して

$ npm run eslint

を実行している。これは AltJS/AltCSS の transpile のようにバックグラウンドでファイル変更の検出と自動チェックさせるほうがよいのかもしれない。

セミコロンなき世界

旧スタイルから JavaScript Standard Style へこのように書き換えてみた。これらの中で比較的、短めのコードを引用する。

#!/usr/bin/env node

'use strict'

const CLI = require('./cli.js').CLI
const WpXml2Md = require('../lib/index.js')

/**
 * Entry point of the CLI.
 *
 * @param {Array.<String>} argv   Arguments of the command line.
 * @param {WritableStream} stdout Standard output.
 *
 * @return {Promise} Promise object.
 */
function main (argv, stdout) {
  return new Promise((resolve, reject) => {
    const options = CLI.parseArgv(argv)
    if (options.help) {
      CLI.printHelp(stdout)
      return resolve()
    }

    if (options.version) {
      CLI.printVersion(stdout)
      return resolve()
    }

    if (!(options.input)) {
      return reject(new Error('"-i" or "--input" has not been specified. This parameter is required.'))
    }

    if (!(options.output)) {
      return reject(new Error('"-o" or "--output" has not been specified. This parameter is required.'))
    }

    return WpXml2Md(options.input, options.output, {
      noGFM: options.noGFM,
      noMELink: options.noMELink,
      report: options.report
    })
  })
}

main(process.argv.slice(2), process.stdout)
.then()
.catch((err) => {
  console.error(err)
})

実にスッキリ。見慣れるまでは JavaScript に見えないかもしれない。これまで C 言語系の構文をもつプログラミング言語に慣れ親しんできたためセミコロン入力は手癖になっていた。しかしいざ不要になると、これがどれだけ負担だったかを認識させられる。

セミコロンはほんの 1 文字だし、プログラミングでは書くより考える時間のほうが長いのだから気にするほどのことか?と考えていた。しかし ; + EnterEnter に置き換わることは実際に体験してみると実に大きい。正確に構文の末尾へセミコロンを置くことと、単に改行するだけというのはかなり違う。セミコロンなし派が一定数いる意味を身をもって知った。

なおセミコロン省略により起き得る問題は前述のように no-unexpected-multiline が検出してくれる。実際の eslint-config-standard/eslintrc.json でも "no-unexpected-multiline": "error" と設定されているため安心だ。

所感

JavaScript Standard Style 導入の所感をまとめる。

  • 一般的な JavaScript と自身のコードを交互にながめても違和感をおぼえにくくなった
  • Atom のスニペットをそのまま利用できるようになった
  • 括弧のスペースを詰めてもそれなりに読める
  • まともな Editor なら構文強調のおかげで括弧とそれ以外を区別しやすいので困らない
  • セミコロンなしはスッキリしてかなり読みやすい
  • セミコロンを入力するのがどれだけ手間だったか実感できる

結論。JavaScript Standard Style は素晴らしかった。今後、他のプロジェクトでも採用する予定。

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