アカベコマイリ

HEAR NOTHING SEE NOTHING SAY NOTHING

技術書典 7 感想

去る 2019/9/22 (日) に開催された 技術書典 7 へ参加した感想。今回は私も合同誌へ寄稿して売り子も体験したので、その辺の話も書く。

合同誌の執筆

私は今年から「JAGAT XMLパブリッシング準研究会」という出版・印刷と電子を結ぶ研究会へ参加している。XML と冠しているが、これはかつて XML 組版を扱っていた名残とのこと。現在はメンバーが参加したり登壇したセミナーの報告や VivliostyleJLREQ に関する話題が中心。電子出版における組版なら何でも取り上げる感じで、メンバーもその関連領域で活動している人たちだ。特に有名かつ中心的な人物として村上真雄さんがいる。

なので技術書典には並々ならぬ関心を持っており、村上さんや私は技術書典へ一般参加もしていた。こういう背景があり、2018/6/30 に CSS組版・パブリッシング交流会を開催して実際に技術同人誌を書かれた人たちを招いて製作技術や課題などを語ってもらった。

あれから一年ほど経ち、研究会として何か技術同人誌を出してみないか?という話が出た。しかしメンバーに村上さんを擁するとはいえ、実際に頒布するとなると知見が足りない。そこで単独参加ではなく、Vivliostyle の開発メンバーで関連同人の制作経験もある緑豆はるさめさんのサークルに乗っかることとした。

これは個人的な思惑とも合致していた。当初、私は研究会とは別に Electron か GatsbyJS 本を個人出版するため akabekobeko/env-create-book という執筆環境リポジトリーを用意していた。しかし今回の合同誌の話を聞いて、いきなり独力でゆくよりも実績ある人たちの活動に学ぶほうがよさそうと判断して個人出版は見送った。実に保守的である。

とはいえ、このリポジトリーは結果として今回の執筆環境の下地となった。元々これは、はるさめさんの手による spring-raining/tbf06-draft: Vivliostyleで本を作ろう Vol.1 を参考に TypeScript 化や SCSS 導入、Markdown へのメタデータ定義などを取り入れたものだが、今回の執筆に至り spring-raining/tbf07-draft へ還元された。役立って嬉しい。

執筆に際しては村上さん、はるさめさん、私はプログラマーということもあり GitHub で PR する方式を採用。しかしそうではないメンバーにとっては馴染みが薄く Git/GitHub 両方を教えるのは難しそうなので、リポジトリーのオーナーであるはるさめさんがコミットを代行することになった。

プログラマーであっても Git/GitHub を利用したことがなくて苦慮することはあるため、手順書を作るなどして対策したほうがよかったかも。こうした改善点などは私のリポジトリーに反映したい。例えば workflow.md というファイルに執筆スタイルや運用手順を解説する、など。

色々あったが、なんとか Vivliostyleユーザー会 - Vivliostyleで本を作ろう Vol.2 の頒布へ漕ぎ着けた。本の内容や執筆環境については技術書典7に出展『Vivliostyleで本を作ろう Vol.2』公開! | Vivliostyle Foundation に公開されているので、よろしければ一読を。

待機列から入場まで

技術書典 5 から会場が池袋サンシャインシティへ移り、とうとう今回は 2 フロア開催となる。ここは印刷・出版業として JAGAT page 展 の 3 フロア開催に馴染んでいるため、前日までは技術書典も似たような運用になるのだと想定していた。

待機列に並んだのは 10:20 ぐらい。これまでずっと一人で参加してきたが、今回は出版・印刷業として本イベントに興味を持ったうちの社長も加わり二人で並ぶ。気温は涼しく湿度もほどほどだが、サンシャインシティ外側は屋根がほとんどなく日差しが厳しい。

入場は 10:50 ぐらいで、通常のエスカレーターや階段を利用せず、通用口のような裏手から 3F に登った。今回は技術書典の公式サイトで事前に整理券を販売していたので、page 展のように 2F で受け付けて後は自由移動だと思っていたのだが、そうではないようだ。

3F に付くとここにも待機列があり、かなり並んでいる。定刻 11:00 を過ぎ開場がアナウンスされ一同、拍手。そして入場。この時点ではフロア間の移動制限は開場時だけだと思っていたのだが...。

フロア移動制限

私の寄稿した合同誌は 3F の う34C で頒布することになった。会場の上を見るとスーパーマーケットのようにエリアを分類しているようだ。村上さんとはるさめさんがサークル参加。はるさめさんは急用により設営後に離れることとなった (なんとか挨拶はできた) ので、他の執筆者が交代で売り子をすることにした。

私が見てきた技術書典 4 〜 6 は常に大混雑だったので今回も身構えていたのだが、3F の午前は静かだった。売り子をしていない間は会場を回っていたので 2F と 3F を見比べてみたところ、明らかに 3F は空いている。

これはおそらくフロア間の移動が制限されているためだろう。開場後もフロアを移動するためには待機列に並び、スタッフの先導で裏通路を移動というのが繰り返された。しかもこの方法について案内板や張り紙などはなく、不定期の場外アナウンスかスタッフに聞かないとわからない。

JAGAT の page 展では受け付けで入場証を発行して、展示スペースとなる部屋の入退場のみを管理している。そのためフロア移動は完全に自由でいきなり 2F から 4F へ行ったり、4F 喫茶店で休憩して 3F から再開といったことも可能。そのためフロアによる訪問機会の差は生まれにくい。

一方、技術書典 7 は厳しい入場制限により実質 2F 優遇となっていた印象。入場待機列や受付、トイレと自動販売機など会場外の重要な機能が 2F に集中しており、そこへの移動が制限されているのだから、こうなるのもやむなし。移動の面倒さによってフロア間を周回する気持も薄れる。

技術書典 7 に関する感想では、これを問題視するものが散見された。伝え聞くところによるとサンシャインシティの一般客へ迷惑をかけないための配慮でそうしたとのことだが、これは本当なのだろうか?

これについては参加者として協力できることがあるかもしれないので、ぜひ原因や事情について公開してほしい。例えば会場の契約金をあげることで解消されるなら、サークル参加料や整理券の代金を値上げするのもよいだろう。少なくとも私は受け入れる。

サークルリスト

技術書典 4 時代からの要望なのだが、サークルリストに具体的なテーマやジャンルをテキストで列挙するためのタグがほしい。技術書典 6 まではリストのページを拡大表示して表紙画像から内容を調べてチェックしていたのだけど、今回はサークル数が大幅に増えたので面倒すぎて諦めた。

システム自体にフィルターを付けるほどではなく、リスト上に Vivliostyle, CSS, 組版 とか React, Hooks みたいなテキストがあれば Web ブラウザーのテキスト検索で探しやすくなるので対応してほしい。いま ソフトウェア全般科学技術 としている部分を任意テキストにして、サークルが自主的にタグ付けするというのでも十分なのでぜひ検討を。

売り子

う34C で売り子を交代で担当してみた。二人体制で主に村上さん + 他の執筆者という感じで運用。前述の移動制限による影響だろうか?従来なら最も混む午前の人通りはスムーズで、午後から 15:00 ぐらいに掛けてが忙しさのピークだった。

雑感を列挙する。

  • Vivliostyle という名を知っている人は少なかった
  • 「CSS 組版」という宣伝文句に反応する人はそれなりにいた
  • 誰かが本を手に取ると人が集まりがち、いわゆるバンドワゴン効果を観測できた
  • 合同誌の試読では小形克宏さんの寄稿に目を止める人が多かった印象、内容が組版であることに加えて画像が視覚的な興味を引きやすかったのだと思われる、「Web 技術で縦組みとかできるんですか」と感心してる読者もいた
  • 合同誌が「Vivliostyleで本を作ろう Vol.2」だったので「Vol.1 はないのですか?」と何度も質問される、内容的に連続していないのだがシリーズっぽく見えたのだろう、Vol.1 があったら 20 冊ぐらいは頒布できてたはず
  • かんたん後払い率は高い、私が売り子をしている間だと 80% ぐらい
  • 合同誌は ¥500 だったが、よく言われるように釣り銭の面倒さから内容やボリュームに関わらず ¥1000 に設定したほうがよかったかも
  • 購入に至らずとも、本を手にとってもらえるだけで嬉しい
  • 自分の制作したものを物理媒体として頒布、という行為が自身の価値を直にやりとりしてる感を強め、承認欲求を激しく揺り動かしたのかもしれない
  • 昼食はサンシャイン内だと激混みなので最寄りのすき家にした、技術書典の昼食事情はどうなっているのだろう?みんなどこで何を食べているのだ?
  • Jun Tajima さんがたい焼きを差し入れ、とても美味しくて腹持ちもよい!しかし腹持ちがよすぎて昼の牛丼との相乗効果により打ち上げ時のツマミをあまり食べられなかった

撤収と打ち上げ

定刻 17:00 をもってイベントの終了のアナウンスが放送される。一同、拍手。後片付け開始。一般参加だと 13:00 ぐらいには帰ってたので、夕方から撤収にかけてのの経験は新鮮だ。

雑感を列挙する。

  • 合同誌 200 冊のうち半分ほどを頒布、余剰印刷を除いて未開封のダンボール 1 箱が在庫となる
  • これと設営機材を含めた計 2 箱をはるさめさん宅へ配送することになった
  • 機材のうち、ポスター展示スタンドが箱に入り切らず村上さんのバッグへ差して持ち帰ることになった
  • 余剰印刷された合同誌については村上さんが引き取り、ただし村上さんバッグ容量が厳しいので私も 5 冊ほど預かる
  • 配送は 2F 奥にヤマト運輸の受付コーナーがある
  • 技術書典の運営が 2F で台車を貸し出しているのだけど、3F から移動してる間に枯渇した
  • フロア間の移動制限がなくなり、段ボール箱をかかえての移動にエスカレーターやエレベーターを利用できるようになった、ありがたい
  • ただし箱は結構な重さなので受付に並ぶ際は地面において足で押しながら移動、他の台車ない組も幾人かそうしているのを見た

打ち上げについては技術書典 7 非公式アフターも気になっていたが、今回は合同誌の執筆者でしめやかに開催することとなった。お店は Tajima さんの案内でビーボ!へ。ここは様々な珍しいビールを生樽で楽しめる。ビールはニライカナイの雫の爽やかな酸味、ツマミではファラフェルという中東の豆料理がスパイシーかつ独特の食感で気に入った。

この席ではイベントの振り返りと共に、Vivliostyle の今後についても話し合われた。ここで私は資料や検証、サンプル コンテンツ拡充などをおこなうグループとして、いわゆる QA (Quality Assurance = 品質保証) をチーム運用するのはどうか?と提案。翌週には Vivliostyle の Slack に qa-team チャンネルが新設されていた。手早い。

まとめ

この記事を書くまでの間、いくつか技術書典 7 の感想ブログを読んだ。

やはり今回初だった 2 フロア開催の混乱についての言及が多い。またシリアスな収支の話やマナーの提案も見られる。規模拡大にともない、サークル側に求められる意識も高くなってきれるのだと感じた。

一方、売り子をしていた時の雑談で「ずいぶん規模が大きくなって、牧歌的な雰囲気もどんどん薄れてゆくのですかね」と言ったら、小形さん (コミケ常連) いわく「サークルと参加者がゆっくり対話する余地もあるし、コミケと比べたらぜんぜん牧歌的」とのこと。

確かに当サークルを訪れた人と数分におよぶ対話が何度かあった。その時は購入に結びつかなくとても興味を言葉にしてくれたこと自体が嬉しくて、こちらも身を乗り出して話したくなったものだ。売り子を交代して会場を回っている間も、混雑しているのにサークルで普通に会話が弾んでいるのを見た。それを咎めるような空気も今のところはない。

今まで一般参加だったのと同人イベントを技術書典しか知らないのと混雑に気後れして、頒布物を一通り集めたら撤収していたのだが、これは実にもったいない姿勢だったのだと気付かされた。今後はもう少し、サークルの人たちと交流してみたい。

総じて学びの多い回だった。次回も楽しみだ。