アカベコマイリ

HEAR NOTHING SEE NOTHING SAY NOTHING

redmine.tokyo 22 感想

2022/5/28 (土) に Zoom 開催された redmine.tokyo 22 の感想まとめ。

講演: Redmine 5.0 新機能解説

新機能で気になったものは以下。

履歴単位の添付ファイル一括ダウンロード。これは簡易なバージョン管理に応用できそう。例えば画像素材を作成するチケットがあるとして、それを複数枚ずつ添付する運用なら履歴をバージョンとみなして比較に利用するとか。

メンション。チケットで他者の意見を求めたいが担当変更するほどではない場面はよくある。ウォッチャーは変更通知を目的としており、反応を求めるものではない。そういうときにメンションは役立ちそう。名指しできてチケット履歴に残る。Slack でも非常に便利な機能なので実装されて嬉しい。この調子で絵文字リアクション実装にも期待。

オートウォッチ。有効にすると GitHub でプロジェクトをウォッチしたときのように、関わったものすべてが通知されるようになる。通知が膨大になるのでは?という懸念については、関心事に比例するのだから整理する目安にするのはどうか?と提案したい。

CommonMark の HTML 埋め込みとチェックリスト記法。私が開発に携わる vivliostyle/vfm では不足している機能 (構文) を補う方法として HTML 埋め込みを案内している。例えば <table> は Markdown だとヘッダー横置きとかセル結合をサポートしていないため、HTML による代替の需要がありそうだ。チェックリストは子チケットにするまでもない小タスクの運用に役立つだろう。例えばチケットの履歴とあわせて必須工程を完了した証明に使うとか。

講演: 全社業務改善ツールとなったRedmineの振り返りとチケット文化の先

メールと Excel 中心の業務管理のつらみを Redmine 移行で解決した話。ITS を導入する動機のひとつとして進捗管理がある。メールや Excel でもある程度は可能だが、そういう機能が用意されているわけではないため自前で対応しなければならない。実際、Excel マクロでがんばる例も見たが専用設計された ITS には到底、及ばなかった。

Excel で管理可能なのは TODO リストぐらいまでだろう。例外の入りにくい定型作業が TODO リストとして並び、それをチェックしてゆくようなもの。コミュニケーション、経緯や言質の記録も含めた業務管理をするなら ITS を選んだほうがいい。

登壇の取り組みでは「巻き込む関係者とマインド」がよかった。私がはじめて redmine.tokyo で登壇したときも、これに近い内容を発表した覚えがある。なにか普及させたいものがあったら味方を増やすのがよい。説得よりも納得と共感を目指す。

分析と施策が見事で参考になるなーと思いながら聞いてたら、裏面がはじまった。

人が集まればどうしても相性のよくない組み合わせはあるわけで。これを前提に仕事を回す話として登壇の「自分にとって最大の利益 = Redmine では仲が悪いチームの疎結合ができる」は重要。仕事として競合必須の一線を引く。それを可視化して合意するために ITS を使う。

この登壇を聞いてて Issue Driven は Promise Driven でもあるのだと思った。「課題に対してすべきことの合意 = 約束」を定義して、そこだけは守りましょうという。

LT: 細かすぎて気づかれてない Redmine の機能改善選手権

スライドの自己紹介が Redmine のチケットになってて面白い。ファーエンドテクノロジーらしさを感じる。

地味な改善として UI 文言の例。チケット画面右上から表示されるコンテキスト メニューの「削除」を「チケットを削除」に変更している。削除は破壊的な操作なので「チケット画面というコンテキスト」に頼らず、冗長でも主語に対象を示すのは大事だ。

プログラマーの習性として冗長さを避けたくなる。そのため、こうしたコンテキスト依存の省略は善いものだと思いがち。けれどコンテキストは意外に理解され難くて、QA チームやユーザーから省略された部分について質問された経験が何度かあった。今ならわかる。プログラミング言語にくらべてグラフィックはコンテキストを明示するのに不向きなのだ。よって重要だったり破壊的な操作は対象を明確にする必要があるのだと。

その他、興味をひいたのはショートカットキーの話。地味というか Redmine 本体からショートカット キーを参照する方法はないようで、そもそも知る機会がない。ググって見つけた以下の記事は参考になる。

できば本体のヘルプとかから参照したい。Textile と Markdown 記法のヘルプみたいなリストがあるとよいかも。

LT: あなたもやってみませんか?一人 Redmine の勧め

前回、りょうまさん登壇で取り上げてた Redmine によるアンガーマネジメントを試してみた話。冒頭で紹介してるレシピ

を PC に不慣れな人に教えたら環境構築に成功した実績ありとのこと。不慣れな人が知りたいであろう手順毎の目的や注意点が丁寧に解説されているのとスクリーンショットの豊富さが親切でよい。

アンガーマネジメントについては内面より会社や組織に由来にするものが多く、あまり効果を感じられなかったとのこと。しかしこのことを把握できただけで収穫ではなかろうか。今後を占うために有用な情報を得られたはず。なんとなく外的要因だと「予想する」のと、それが「計測された」のでは天と地の差がある。

締めで言及している他の用途についても ITS で管理することにより、見えてくるものがあるだろう。私は雑な考察であっても積極的に ITS や Wiki へ書くようにしている。テキスト化する行為そのものが思考の整理によいし、その時点では雑に見えても後から読み返すと貴重な資料になったりするものだ。

LT: Redmine Marketplace を紹介します。

Redmine Marketplace の話。Redmine 公式の redmine.org にもプラグインやテーマの紹介ページはあるのだけど運用は個々の作者に委ねられている。そのためソフトウェアとしては更新されているのにページは放置されていたり、対応している Redmine バージョンが不明だとかよくある。私は自分の開発してるテーマを更新したときに Theme List を更新しているが、正直かなり面倒。

かつて WordPress を利用していたこともあり、wordpress.com のようにエコシステム側でリリース ページや配布運用してくれないかなぁと思ってた。もしかすると Redmine Marketplace がそれを叶えてくれるかもしれない。なにしろ Redmine でビジネスをしている Ankosoft が運用しているので。

現在はベータ版なのでプラグインやテーマの紹介中心だが、将来は有料テーマの販売なども手掛けるのだという。前述の WordPress が大成功した要因としてマーケットプレイスの存在は大きいので、期待している。

いずれ有償テーマとか作って爆売れして札束風呂 (前世紀的成金像) とか夢みちゃったりして。なお有償にするつもりゼロの自作テーマは既に掲載されている。

LT: Redmine日本語開発者コミュニティを創設します! 資料 録画

Redmine パッチ会に携われている NISHIZAKI さんが日本語圏の Redmine 開発者向けコミュニティーを創設しようとしている話。

パッチ会の課題として Redmine 本体の仕様や設計、それらの経緯がわからずつらみがあるとのこと。これを踏まえて開発に特化した日本語の情報交換コミュニティーを創設。運用はとりあえず Slack。私もユーザー登録してみた。

直近の展望としてはドキュメント整備。仕様や設計の知見を日本語のドキュメントとして作成を想定している。私は Ruby に疎いため本体やプラグイン関連は貢献できなさそうだが、テーマ開発ならば何か書けるかもしれない。

LT: カスタムフィールドで、json-schema を使ってみよう 資料 録画

以下の組み合わせでチケットへ任意のフォームを追加して運用する話。

と書いてもなんのこと?であるがデモやスライドのスクリーンショットを見ると面白さがわかる。view customize はもともと強力にカスタマイズ可能だが、この登壇のアイディアがよいのはフォーム構造を JSON Scheme という形式で管理可能にしたこと。JSON Scheme はテキストなので可搬性、再利用性がとても高い。どこかのプロジェクトで試してよかったフォームがあれば簡単に流用できる。

LT ながら実運用についても具体的に説明されていてすばらしい。特定の業界 (業態) 向け Scheme を公開して共有するとか面白そう。例えば小売店の受発注 Scheme とか。

講演: 業務システムをRedmine(SHERPA)に載せ替えてみた

SHERPA SUITE は Redmine ベースの製品なので、ワークフローや View Customize Plugin などの機能紹介がそのまま良質な Redmine 入門になっている。Redmine を使うと何ができる?という質問に対して見せるのによい登壇だった。

講演: 社内Redmineプロモーションのすすめ

Redmine を社内展開するにあたり、アイドルのプロモーション手法を参考にする話。新しいツールを導入しようとしても、現場に受け入れてもらうのは難しい。上意下達による義務感、仕組みを提案した意識高い人との衝突回避、といった感じで受動的に「仕方なく」使われがち。

ではどうしたら能動的に利用してもらえるのだろう?この課題に対して本登壇では「ツールのファンになってもらう」ことを目指して「アイドルのプロモーション」に学ぶ。私も似たような取り組みをしたことがあり、redmine.tokyo 14 で「なじむ Redmine」として発表した。この中の「活況を演出する」は本登壇でいうプロモーションを意識して実施した覚えがある。

ちょうどいま人気のアニメ、パリピ孔明を彷彿とさせる内容だった。そして締めの伏線回収。この登壇をリアルタイム視聴できてよかった。

講演: 「情報」を「書く」ということ(凝縮版)

REDMINE JAPANE で発表された「情報」を「書く」ということ(仮) #RedmineJapanの凝縮版。

業務における情報管理と伝達ツールは膨大である。そのため適切な位置付けと取捨選択をしてゆかないと、ツールに翻弄されるばかりだ。この登壇では「情報設計」という観点からツールの位置分類、棲み分けのヒントを提案する。

せっかく Redmine のような ITS を導入したのに Slack しか使われないとか、ITS でチケット起票しても通知が不十分で気づかれない、みたいな悩みはつきもの。まずはこれらを「静的」、「動的」、「特化型」で分類するところから始めるだけでも、向き不向きが浮かび上がってきて解決の糸口をつかめると思う。

例えば Slack は主に動的だが、テキストを記録する観点からは静的ともいえる。特にスレッド機能は簡易 ITS のように見えるから、これでタスク管理いけるのでは?となりがち。しかし Slack のメッセージはメタデータが弱く、タイムラインはスレッドも含めてどんどん押し流されてゆく。未完了のまま流れたタスクを検索しようとしても

  • メッセージ
  • 投稿者
  • 日時

ぐらいしかヒントがないので「確か〜ぐらいに〜の話をしたっけ...」という感じで探すことになる。

先に Slack を動的に位置付けておけば、静的な用途は危ういと気づけたはず。この用途なら ITS のほうが向く。逆に ITS も動的な面を持つが主体ではないので Slack との併用を検討するだろう。ひとつのツールで賄うのではなく、相互補完すればよいのだ。

こういう、経験則でなんとなく知っていても言語化は難しいものをスッキリ説明している点で本登壇はすばらしい。

俺たちの最強の Redmine を語る

VirtualBox (with Vagrant) 上の Redmine を実際に動かしながら、最強の Redmine について語る。

運用として参考になることが多い。例えば運用ルールを必ず書く、定型的なものはテンプレート化して漏れの回避と穴埋めによる省力化を狙うなど。こういう感じで色々な人 (業態) の Redmine 運用を実際のデモとして見たい。もしくは見せたい。

というのもあって 2022/6/25 に開催された Redmine エバンジェリストの会で、ある企画を提案してみた。もし採用されれば次の redmine.tokyo で披露するかもしれない。

懇親会

今回も懇親会は真面目なテーマで盛り上がった。それとオンラインになってから懇親会まで残るのは常連が多い印象。本編参加の分布もそうなっているらしい。初見や新参の方は配信を見るにとどまり、意見交換まではゆかないのだろう。参加というより視聴である。

知見を広く共有する目的としては好ましいが、多様性の面で心配だ。COVID-19 が収まってリアル開催できるようになれば状況は変わるだろうか?

おわりに

今回も楽しく有意義な情報に触れられる良イベントでした。登壇者と運営のみなさま、ありがとうございました!

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