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HEAR NOTHING SEE NOTHING SAY NOTHING

redmine.tokyo 23 感想

2022/11/5 (土) にハイブリッド (オンライン + オフライン) 開催された redmine.tokyo 23 の感想まとめ。

オフライン会場

COVID-19 による緊急事態宣言が出されてからはや 3 年。redmine.tokyo は Zoom によるオンライン開催を続けてきた。

運営、登壇者それぞれの努力と改善もあってオンライン開催もかなり洗練されてきたのだけど、そろそろリアルな場も恋しい。あわせて世間的にワクチン接種が進んだのと、対面イベントのノウハウ (マスク、手洗い消毒、ソーシャル ディスタンス) 蓄積もあってそろそろオフライン開催いけるのでは?と期待は高まる。

そんなおり、redmine.tokyo 23 はハイブリッド開催となった。しかも今回は登壇である。うれしい!

というわけで早めに現地入りした。会場は清潔感あふれるオシャレな部屋。巨大なタッチディスプレイ式の Microsoft Surface が鎮座してたり謎の飛行物体 (伏線) も確認されて、はじまる前からワクワクする。

懐かしい面々と挨拶しつつ WiFi 設定やマイク テストをして待機。オンライン開催となる前に比べてオフライン参加者の数は少ない。それでも対面となれば、よい意味で張り詰めた空気があって自然と背筋ものびようというもの。ひさしく忘れてた感覚だ。

いつもどおり Twitter でハッシュタグ #redmineT をつけて開幕宣言。祭りがはじまった。

講演: 今日使える明日のRedmine「RedMica」リリース3周年振り返り

RedMica がもうすぐ 3 周年。定期リリースを保証すると宣言して実際に 3 年、維持できてるのはすごい。

RedMica として複数バージョン運用はやめて最新のみをサポートするように方針転換するとのこと。過去バージョンのセキュリティー パッチ適用などは Redmine が提供しているし、RedMica は最新機能を先取りするディストリビューションなのでこれは支持する。

Redmine の利用例として国民年金基金連合会のシステムを紹介。ファーエンドテクノロジーのブログにもあげられている。

カスタマイズされているが見慣れた画面とレイアウトに親近感。会場の反応も和やかだ。前田さんとしてかなり興味を惹かれたようで、このシステムが採用している Redmine のバージョンやプラグイン、インフラなども調べていて面白かった。

講演: Redmineでチケット駆動開発を実践する 録画

ITS として Redmine を利用するに至る経緯の話。

Trac、懐かしい。内製の Web ベースな BTS を利用していたプロジェクトから Excel 管理のプロジェクトに移って、覚書とか議論に向かないなーと不満があったのだけど、有志が Trac を提案して試験導入された。完成度が高く、OSS なのでカスタマイズもしやすいというのに感動。有志の一人がカレンダーの月曜開始とか祝日表示なんかをカスタマイズしてくれた記憶がある。

BTS から ITS への転換、重要。BTS は「起きたこと = Bug」だが ITS は「これからやること = 課題 = Issue」なので、あらゆるものを可視化して管理することにつながる。Issue 管理をやりだすと柔軟にプロジェクトを追加できる Redmine のようなシステムがほしくなって、私もこの理由から導入したのであった。

ある工場の Redmine 2022 〜ある工場の Redmine バージョンアップ 5.0〜

「Redmine 5.0 が出たのに」 「"バージョンアップ"に日和ってる奴いる?いねぇよなぁ!!?」 「...」 「ここにいるぞ! (馬岱)」

というわけで本登壇により Redmine 5 へ移行する機運が高まった。副業で手伝ってる企業の Redmine が 4 系。これを 5 更新するか、いっそ RedMica 移行するかで迷っている。

それにしても「ある工場」シリーズ、メジャー更新の回だとでプラグインのトラブルが起きても迅速に対応されててすごい話がでてくるけど、これは本当にすごいこと。私もいくつか OSS 運用してるのだが、バグや改善提案があっても腰は重いものだ。それだけに Redmine プラグイン、テーマを継続的に開発している方々を心から尊敬している。

LT: Redmineプラグインのテスト自動化を頑張っている話

プラグインの自動テスト CI は GitHub Actions。非常に強力なので私も個人開発の CI をこれに乗り換えた。CI に求められる機能はあらかた揃ってるのと GitHub 上で起動や動作確認できるのが便利でよい。

LT: <チケット駆動で大切なことはオフショア開発が教えてくれた>

オフショアのコミュニケーション問題、国内でも COVID-19 以降にリモートワークしてる企業だとあてはまりそう。Redmine のような ITS なら課題の達成条件を明確にする、ITS 以外のコミュニケーションも Slack などの非同期テキストにする、あたりを前提として運用改善してゆくのがよいと思う。

「(補足)リアルタイムMTGの落とし穴」は重要。リモートワークしているのにリアルタイム会議が多く、しかもうまく回ってない感があった。どれほど賢い人たちで集まってもリアルタイム会議を効率よく進行するのは非常に難しいのだ。結果、定例として入れているが Slack で開催の採決をとって「積極的な見送り」を心がけるようになった。

会うほどであれば議題を詰めておく。人数も必要最小にする。最近はこれがうまく機能していて会議が減り、プログラミングの時間を確保しやすくなった。それでも音声や画面共有がほしい場合はちいさく Slack ハドルで会議する感じ。

よきコミュニケーションとしての雑談は Slack の times (分報) チャンネルがオススメ。

自分用のメモとしてやることやりたいこと、問題点、興味ある記事の寸評なんかをツイート的に書いてゆくのだが、public なのでよい感じでアドバイスやツッコミがはいる。リモートワークかつリアルタイム会議を抑制していると、times が雑談や相談をほどよく補完してくれるのだ。

ハドルの起点としてもよい。個人チャンネルなので自然と参加者はしぼられて、だいたい 1on1 になる。

LT: <今こそ、Redmine の UX / UI を考える>

テーマ作者として今回、最も楽しみにしていた登壇。

テーマ開発の課題として Redmine はバックエンドとフロントエンドが未分化な時代に設計され、HTML がバックエンド生成されることがある。この方法でもセマンティクスな HTML だけならば CSS/JS で制御しやすいのだが、例えばガントチャートやリポジトリー画面のようにインラインな HTML のスタイル指定があると扱いにくい。また CSS も基本的に単体で運用されていため、適用される部位の特定やバージョン間の diff を取るのも大変だ。

本登壇で紹介された標準テーマの Storybook は、こうした課題の対策としてよさそう。UI/UX を段階的にモダーン化する第一歩としてこの Storybook を公式化するのはどうだろうか。Storybook は UI カタログとして機能するため、テーマ開発者としてカスタマイズ箇所の確認として役立つ。バージョン更新により UI が変更されたとしても、それは巨大な一枚板の diff ではなく Storybook に分割された単位で把握すれば済む。

Storybook の運用コストは増えるが、上記に加えて Redmine 本体としても UI の棚卸しと E2E テストに近いものが手に入るのは大きなメリットではなかろうか?先に Storybook 導入しておくと、フロントへ React や Vue などのコンポーネント系 UI ライブラリーを採用する際にも役立つだろう。

チケット茶番劇

我々の登壇。

チケット起票から終了、差し戻しからの挽回で完了、というのを喜劇としてやってみた。ITS の旨味としてコメントによる過程の記録がある。しかし世間の ITS 運用は起票して終了するだけというのが散見されるので、過程をどうやって書くのか?というのを実直で伝えたかった。

半分ぐらいの時間で終わった (想定どおり) ため、質疑応答へ。

企業間で Redmine を共有しておらず、コミュニケーションがメール、Slack、電話など外部となる場合に Redmine へどう集約してゆくかについて。

私はテキスト ベースならば Redmine のチケットや Wiki にそのまま転載、電話なら要約を文字起こししてる。転載や文字起こしの際は元データの日時、人物の情報も添えておく。「コミュニケーション = 契約 = 言質」と認識しているので、こうした作業コストも自衛手段としての必要経費と考える。

過去に取引先との会議で、作業指示について水掛け論へなりかけた。その際、私はこの「記録」を持ち出して「穏当に」解決したことがある。元は電話の口頭指示だったので揉めることも覚悟したが、取引成立するぐらいに相互信頼はあったのか「確かにそう指示したようですね。失念してました。」という訂正で済んだ。

数分ほどの出来事で、相手と私ぐらいしか覚えていないだろう。けれど「非テキスト」な「過程の記録」が役立った例として私の中では重要な一件だった。

講演: チケット駆動開発現場の最前線

登壇で紹介されたツールが面白い。

特に後者の運用はタスク管理における「時間」の扱い事例として参考になった。勤怠、見積もり、実作業の時間が自動的に連動してくれるような仕組みを夢見てる。

LT: Redmine を railway にデプロイしてみた

Railway、はじめて聞いた。Heroku のような DB 込みのクラウド環境らしい。

この手のは DB 運用コストが高くつくのか、Heroku みたいに有料化されがちなのだよね。Railway がここをどのように解決してるのか気になる。

LT: <『逆引きでわかる!Redmineハンドブック』をダイジェストでご紹介>

Redmine 本の紹介。

リアル会場でサンプル小冊子をいただいた。本書は Vivliostyle で組版されたとのこと。Vivliostyle コミュニティーに参加してる身として嬉しい。文章は VFM で執筆されたのだろうか?気になる。

内容としては Redmine 紹介だけでなく、業務フローやポモドーロテクニックなども言及しているようだ。ITS を実践的に運用するガイドブックという印象。

LT: Redmineを利用する趣旨

謎の飛行物体はドローンだった!設営時の伏線回収!

で、なぜドローンなのか。視界をドローンに託すことは飛行体験であり、Redmine を利用することは記憶や思考を拡大してくれる。身体感覚の拡張という点で共通しているということ。

これは確かに。ITS や Wiki のようなナレッジベースを持つと、信じられないほど広大な知識の引き出しを手に入れたような感覚がある。しかもこれは低コストに増減や洗練が可能。なんだかティモシー・リアリーを彷彿とさせるが、彼も晩年はコンピューターへ傾倒したそうだ。こうしたシステムが手軽に利用できる現代はなんとよい時代か。

LT: 業務システムをRedmine(SHERPA)に載せ替えてみたPart.2

SHERPA SUITE による業務改善の事例紹介。

トラッカーによるテンプレート管理、メール テンプレート処理、RPA 連携など。私の登壇で質疑応答にあった Redmine 外のコミュニケーションどうするか?のひとつの回答かも。企業間だとコミュニケーション手段や運用を変えるのも結構な政治力を要するので、効率的な力技としてこうしたツールが役立つ。

おわりに

今回も楽しく有意義な情報に触れられる良イベントでした。登壇者と運営のみなさま、ありがとうございました!

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