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Head First SQL

March 22, 2010Head First SQL, SQL, 書評

この本は前から気になっていたのだけど、値段 ( 4,200 円 ) と分厚さ ( 500P 以上 ) で購入を躊躇していた。

しかし先週の金曜日、書店で人を待っている間、じっくり立ち読みをしてみたら予想よりもずっと良い内容だったので、一念発起して購入に踏み切った。今回の連休中に一通り読み、アタリだ!と感じたので感想を書いておく。

本書は書籍というフォーマットをとても効果的に使っている。立ち読みで惚れたのもこの特徴による。例えばページ構成。

詳細な説明を別のページに託す事はあっても、現在説明しようとしている事柄については大半がページまたは見開き単位で完結している。例外は理解度を試す出題と回答ぐらいのものだ。

ページをめくる事なく必要十分な情報を一望できるのは爽快である。紙の書籍を読む時、いつもスクロール出来ない事のもどかしさを感じていたが本書では一度もそのような感情を覚えなかった。

見開きを効果的に利用しているが故に、電子書籍化によって良さが損なわれるかもしれない。見開きをどのように再現するのかは電子書籍の大きな課題だと思う。ジャンプのマンガとか見開きなしでは魅力が半減する。

技術書ではサンプルコードやコラム、ノートの類が頻出するが本書のそれらは本文に埋め込まれている。ページの下部や節の終端などに追いやられる事なく本文の中に鎮座。そのため見た目がスクラップ ブックに近い。

この方法は視覚的にも起伏を感じられる。目を休ませる為の区切りや再読する時の開始点を探しやすい。文中に異物を配置する事が読書の手助けになるとは思いもしなかった。余白も多く時には人物と決め台詞ぐらいしか描かれていないページもあるが、これは読書スピードの緩急を調整しているように感じられた。そうしたページに出くわした時は立ち止まるべきタイミングなのだろう。実際、そのようにすると心地よく読み進められた。

今回はこの効果を狙って注釈をちょこちょこ入れてみた。箸休めならぬ視線休めといったところか。確かにある程度は読みやすくなる。けれどもくどい。私は上手く使いこなせていない。

絵や写真を多用していることやそれらのモチーフになるべく人間を選び、人の気配を絶やさぬようにしている事なども特徴的。本書の冒頭にも工夫した点として説明されているが読み進めてゆくと効果の程を実感できる。

肝心の SQL に関する説明も非常に上手。基本的な進行は段階学習だが必ず現時点の方法では解決の難しい問題を提示して引きを作るようにしている。章内ではスマートな解法を獲得してゆき、問題の解決に新しい手法が必要になったところで新章へ進む。課題には物語を持たせており問題を解決させてゆく事で進行するようになっている。これも読者を飽きさせない為の良い工夫だ。エピソードも複数ある。レンタルビデオ屋の整頓に興味がなくても友の恋路は気になるかもしれない。

Joel on Software でも「やさしい機能仕様」として言及しているが可笑しくする事は重要だと思う。「必要もないのに具体的に」表現されたものはそれだけでユーモアとなり、読み進める上での抵抗感を大いに和らげる。本書では「動物愛好家でクエリを掛けたら剥製を趣味にする人を除外できなくて...」というエピソードが気に入った。

これまで読んできた技術書でここまで読者を意識したものを見た事がなかったので、かなり感銘を受けた。他の Head First シリーズでは JavaScript のものが気になっているのだが、そちらも本書のような感じなら購入したい。

因みに分厚さだが紙質や余白の多さのためか思ったよりも気にならない。重量も見た目よりずっと軽く柔らかくて丈夫。栞を用意しなくてもページを開いた状態で伏せておける (私はこれを「ズボラ読み」と呼んでいる) ぐらいなので寝室の友にもピッタリではなかろうか。

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